世界の絶景・世界遺産

ウユニ塩湖はなぜ世界遺産じゃない?「天空の鏡」の絶景と子連れ旅の可能性を調べてみた

はじめに

子どもが図鑑を眺めていて、「そらといっしょのみずうみ」というページで手が止まりました。空がそのまま地面に映り込んだような、不思議な写真。ウユニ塩湖でした。

「これ、鏡?それとも本物の空?」と聞かれて、正直うまく答えられませんでした。我が家はまだ行ったことがないのですが、あまりに気になったので、行き方やベストシーズン、そして8歳と5歳の子どもを連れて行けるのかどうかを調べてみることにしました。

ウユニ塩湖の水面に空と雲がそのまま映り込み、地平線の境目が分からなくなっている「天空の鏡」の風景
雨季のウユニ塩湖。「天空の鏡」と呼ばれる鏡張りの景色(写真: Christopher Crouzet / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

ウユニ塩湖ってどんな場所?

ウユニ塩湖は、南米ボリビアの標高約3,656mの高地に広がる塩の大地です。富士山の山頂(3,776m)とほぼ同じ高さにあると考えると、そのスケールが少し想像しやすくなります。

面積は約10,582平方キロメートルで、世界最大の塩湖。日本でいうと岐阜県とほぼ同じくらいの広さが、真っ白な塩の結晶で覆われています。

数万年前、この一帯にはミンチン湖・タウカ湖と呼ばれる巨大な湖が存在していたそうです。氷期が終わって気候が乾燥していく過程で湖の水が蒸発し、水に溶けていた塩分だけが地表に残ってできたのが、今のウユニ塩湖だと考えられています。

何がすごいのか

一番の見どころは、なんといっても「天空の鏡」と呼ばれる鏡張りの景色です。雨季にうっすらと水が張ると、風のない日には空と雲がそのまま湖面に映り込み、地平線がどこにあるのか分からなくなるほどの絶景になります。

面白いのは、ウユニ塩湖が世界遺産には登録されていないという事実です。これだけの絶景なのになぜ、と調べてみると、明確な公式理由は発表されていないものの、世界遺産に登録されると開発や採掘に制限がかかるため、塩の採掘事業を続けたいボリビア側があえて登録を見送っているという説が有力なようです。ウユニ塩湖は昔から地元の人々の塩の採取場でもあり、観光地である以前に生活の場でもあるわけです。

もうひとつの特徴は「世界で一番平らな場所」と言われるほどの地形で、塩原全体の高低差がわずか50cm以内しかないこと。この平坦さのおかげで、遠近感を利用したユニークな記念写真が撮れることでも知られています。

塩湖の中には「インカワシ島」というサボテン島も浮かんでいます。高さ4〜5mにもなる柱サボテンが林立する不思議な島で、アンデス山脈が隆起した際にサンゴ礁ごと持ち上げられてできたと考えられているそうです。塩の大地の真ん中に緑のサボテンが立ち並ぶ光景は、写真で見ただけでも異世界感があります。

真っ白な塩の大地の中に浮かぶインカワシ島。岩肌に背の高い柱サボテンが林立している
塩の大地に浮かぶサボテンの島、インカワシ島(写真: Diego Delso / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

滞在するなら、壁も家具もすべて塩のブロックでできた「塩のホテル」も見どころのひとつです。また、夜明け前には天の川が見える星空スポットとしても知られており、湖畔ではリャマやフラミンゴの姿が見られることもあるそうです。

ベストシーズンと見どころ

ウユニ塩湖には大きく分けて2つのシーズンがあります。

  • 雨季(12月〜3月):あの「天空の鏡」の鏡張りが見られる時期。特に2月下旬〜3月上旬は、雨の頻度が減って晴天率が上がり、水鏡と青空が両方楽しめる可能性が高いとされています
  • 乾季(4月〜11月):地面が乾いて硬くなり、車で塩原の奥まで乗り入れられるようになる時期。7月〜10月上旬は特に晴天率が高く、真っ白な大地をジープで走る爽快な景色が楽しめます

同じ場所でも、季節によってまったく違う顔を見せてくれるのが面白いところです。

現地ツアーの定番は、ウユニの町からインカワシ島や塩の採掘場を巡り、夕方は水鏡やサンセットのポイントで写真撮影、というモデルコースです。さらに足を延ばすと、フラミンゴが群れる「ラグーナ・コロラダ(赤い湖)」や間欠泉が噴き出すエリアまで巡る2〜3泊のツアーもあり、こちらは塩湖だけでなく火山地帯ならではの景色も楽しめます。

子連れで行くなら

ここが一番気になっていたところです。調べてみると、標高の高さが子連れにとって大きなハードルになりそうだと分かりました。

国際山岳連盟(UIAA)の医療部会が出している「Children at Altitude」という提言には、子どもを高地へ連れて行くときの目安が示されています。

  • 1歳未満:高地での長期滞在は避けるべき(乳児特有の高山病のリスクがあるため)
  • 2歳未満:寝る場所の標高は2,000mを超えないようにする
  • 未就学児:寝る場所の標高は2,500m未満が望ましく、3,000〜4,000mを超える場所での宿泊は避ける

ウユニ塩湖や拠点となるウユニの町は標高約3,650m。この目安に照らすと、5歳の娘を連れて泊まるには明確に高すぎることになります。

もうひとつ知っておきたいのが、子どもの高山病(AMS)の発症率は大人と変わらないと複数の研究が示していることです。「子どもは元気だから平気」ではないわけです。しかもUIAAの提言は、幼い子どもほど自分の体調不良をうまく言葉にできず、「静かになる」「じっとしている」「食欲が落ちる」「眠り方が変わる」「機嫌が悪い」といった行動の変化としてしか現れないことがある、と注意を促しています。旅先で子どもがぐずったとき、それが疲れなのか高山病なのか、親が見分けるのは簡単ではなさそうです。

行くとすれば、標高の低い都市で数日過ごして体を慣らす、水分をしっかり摂る、無理な移動を避けるといった対策に加えて、出発前に必ず医師に相談することが前提になると感じました(この記事は一般的な情報の紹介であり、医学的な助言ではありません)。

加えて、ウユニは小さな町で、大都市のような高度医療の体制が整っているわけではありません。何かあったときにすぐ専門的な医療にアクセスできるとは限らないというのは、子連れで検討するうえで頭に入れておくべきポイントだと感じました。一方で、あの平坦な地形を利用した「遠近感トリック写真」は、恐竜のおもちゃを巨大に見せたり、家族全員を手のひらに乗せたりと、子どもと一緒に企画するだけでも盛り上がりそうな遊びです。ハードルの高さと同じくらい、行けたときの楽しみも大きい場所だと感じました。

費用とアクセス

日本からウユニ塩湖への直行便はありません。まずボリビアの首都ラパスまで飛行機を乗り継ぐことになり、乗り継ぎ時間を含めると片道30時間前後を見ておく必要があります。ラパスからウユニへは飛行機で約1時間、バスなら10時間以上。ウユニの町から塩湖までは車でさらに30分ほどかかります。

費用は、現地の日帰りツアー自体は数千円台から見つかりますが、ネックになるのは日本からの航空券と移動日数です。旅行全体では1人あたり数十万円規模、日程も1週間以上を見ておく必要があり、決して手軽に行ける場所ではありません(具体的な金額は時期や航空券の取り方で大きく変わるため、旅行会社の見積もりで確認してください)。

もうひとつ気をつけたいのが服装です。標高3,600m超の高地なので、日中は日差しと紫外線が強烈な一方、朝晩は真夏でも冷え込みます。子連れとなると、帽子や日焼け止めに加えてフリースやダウンといった防寒着まで一式そろえる必要があり、荷造りの段階からすでに一筋縄ではいかなさそうです。

まとめ

  • ウユニ塩湖は標高約3,656m、面積約10,582k㎡の世界最大の塩湖(岐阜県とほぼ同じ広さ)
  • 世界遺産には未登録。塩の採掘事業を続けるためという説が有力
  • 雨季(12〜3月)は「天空の鏡」、乾季(4〜11月)は白い大地をジープで走る爽快感が楽しめる
  • 標高3,650m前後という高地。UIAAの提言では未就学児は標高2,500m未満で寝るのが望ましいとされ、5歳児を連れて泊まるにはハードルが高い
  • 子どもの高山病の発症率は大人と同じ。幼いほど症状を言葉で伝えられないため、行くなら事前に医師へ相談を
  • 日本からは片道30時間前後、旅行全体で1週間以上・数十万円規模という腰を据えた計画が必要

調べれば調べるほど、簡単には行けない場所だということが分かりました。それでも、子どもたちと「大きくなったら、あの鏡みたいな湖に行ってみようか」と話すだけで、地図を眺める時間が少し豊かになった気がします。いつか家族全員が高地にも体調にも余裕を持てるタイミングで、実際にあの景色を見に行きたいと思います。